たぶん百合のために

好きな百合作品の感想を綴っていきます

【百合漫画紹介】欠けた月とドーナッツ(雨水汐)

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こんにちは。

今回は現在百合姫で連載中の漫画

「欠けた月とドーナッツ」を紹介したいと思います。

なんだか意味深なタイトルにも思えるこの作品。

きっと多くの人が主人公に共感し、そしてハマることができると思います。

 

 

自分に自信のない、社会人の女の子が主人公

 

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この漫画の主人公は彼女。

まだ入社間もないOLとして働く宇野ひな子。

彼女は周りからの薦めもあり、オシャレをして彼氏を作ろうとしていましたが上手くいきません。

それもそのはず。

彼女自身がそれを望んでいないのです。

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ひな子はこれまで男の人を好きになれずにいました。

生まれつき…かどうかは分かりませんが、男性に好意を向けられると気持ち悪いと思ってしまうようです。

 

そして何よりひな子は自分のことが嫌いでした。

仕事で失敗ばかりしてしまう自分。

周囲の人間に本音を言えずに流されてしまう自分。

人を好きになれない。

欠陥ばかりの自分。

 

酷い自己嫌悪に陥り、彼女は路上でうずくまってしまいました。

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うずくまり泣いている彼女に誰かが声をかけます。

ひな子が顔を上げるとそこにいたのは。

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同じ会社の先輩の佐藤あさひでした。

あさひはひな子を公園のベンチへと誘い、ドーナッツをあげます。

仕事は完璧、でもそれ以外のことにはまるで興味のない冷たい人間。

あさひのことをそう思っていたひな子は、彼女の優しさに触れ

久しぶりに心地よい時間を過ごします。

いつしか涙は止み、ひな子は晴れやかな気持ちになっていました。

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変えたくても、なかなか変えられない自分

 

あの公園で過ごした一件から、少しずつひな子はあさひのことを意識し始めます。

同僚にあさひのことを悪く言われムッとしたり、あさひのことを思い出して顔がほころんだり…

 

しかし彼女はなかなか上手く生きられません。

この間のお礼としてあさひにドーナッツを渡したひな子。

会話の流れで、毎日同僚とランチに行って金銭的余裕がないことをあさひに明かすと、彼女にこのように返されました。

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あさひは人の目を気にせず、毎日1人で昼食を食べています。

1人になるのが嫌で、また周囲にどう思われるかを気にしてしまうひな子がしたくてもできないことです。

その羨望からか、自己嫌悪からか。

ひな子は言いたくもない嫌味をあさひにぶつけてしまいました。

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 「その通りですね」とあさひにそっけなく返されたひな子。

お礼のつもりだったドーナッツも返され、ひな子は1人立ち尽くします。

再び襲う後悔と自己嫌悪…

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さらにひな子は周りに流され続けてしまいます。

「彼氏のいないひな子のため」と合コンをセッティングされ、

母親からの電話では結婚はまだかと急かされる。

 

本当はあさひのように自分の意志を持って生きたいのにそうできない。

1人の部屋で彼女はうずくまりました。

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ひな子に共感する人。

とても多いのではないでしょうか。

私も自分が嫌いで、仕事でミスった後などは1人で落ち込みます。

貯金額がどうとか、同年代の人間と比べて貧しい生活をしているとか。

周囲の人間が次々と結婚していくことにも強い焦りを覚えています。

ここら辺は読んでいて本当に辛かったです。

 

しかし休日に偶然あさひと会ったことでひな子は救われました。

あさひの家にお呼ばれしたひな子は食事をご馳走になり、この前酷いことを言ってしまったことを謝ります。

そしてどうしたらいいのか、あさひに心情を吐露しました。

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「では」と、

あさひから掃除が苦手な者同士、明日の休みは自室の掃除に費やそうとの提案を受け、

帰宅したひな子はさっそく掃除を始めました。

何かが変われる気がする。

気が付けばひな子の頭の中はあさひでいっぱいになっていました。

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見方を変われば全てが変わる。あさひもひな子のことを気にしていた

 

ひな子があさひのことを意識するのと同じように、あさひもひな子のことを気にかけていました。

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あさひは妹のすばると2人暮らし。

両親や祖母はかなり前に亡くなっており、それからまだ学生のすばるを1人で育ててきました。

「自分はすばるさえ幸せならそれでいい…」

そう思っていた彼女にも気になる人ができました。

そう、ひな子です。

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すばるの後押しもあり、あさひはひな子を家に食事に誘うのに成功。

さらには連絡先までゲットします。

 

あさひにとってもひな子は別世界の人間でした。

いつもキラキラしていて、オシャレや恋に余念がない。

すばるの世話のためにと押し殺してきたもの、それを全て持っている人間。

心のどこかで憧れていた気持ちもあり、だからこそうずくまって泣いている姿を見た時は、

驚いたのと同時に親近感を沸いたのだと思います。

 

そう、全ての事柄は見方1つで全く違う顔を見せるのです。

ひな子が空っぽで意味のないと思っていた化粧や外面。

それはあさひが心のどこかでうらやましいと感じていたものでした。

 

一方であさひは自分が1人で愛想のない人間と思っていましたが、

自由に自分に依って生きるその姿こそ、ひな子が欲しているものでした。

 

私たちも自分の嫌いなところ、失くしたいところがたくさんあるでしょう。

しかしそれも長所になりうる。

そんなことをこの漫画は教えてくれているのだと思います。

 

非常に美麗な絵で、読む人の心を掴んで離さない「欠けた月とドーナッツ」。

現在も百合姫に隔月連載中です。

二か月に一回しか読めないというのは非常に惜しいですが、私が百合姫を買い続ける大きな原動力の1つです。

雨水汐先生はこれが初連載とのこと。

最初の連載策でこの高クオリティとは…素晴らしいとしかいいようがありませんね。

 

雨水汐先生の短編集、「きみのために世界はある」も非常に素晴らしい作品です。

この漫画を読んで気になった方は、是非こちらも読んでみて下さい。

 

それではまた。